男をやっていれば気が紛れるかと思っていた話

XジェンダーMtFなのか判断に困って自分の男の部分に困惑しているという事は以前書きましたが、今回はその男の部分を特化させてトランスジェンダーな事を忘れようとしていた時の話です。

子供の頃から性転換するかどうかを悩む程度には早い段階から色々と考えていましたが、そんな事は身内含めて人には言えず、ましてや引っ込み思案な性格なので、そうなると外側から見れば私はただの大人しい男の子という状態にしか見えなくて、男である以上は当然ながら子供であっても男扱いされて成長する毎に徐々に男の役割も求められるんですよね。

身近な事ですと「男なんだから泣いたらダメなんだよな」「力無いのに力仕事を求められるのがしんどい」とか書くとキリがないですが色々ありました。

傍から見れば本当に些細な事だと思うのですが、強く違和感を覚えていたのは「親から格好良さを求められる」という部分でしたね。その時は事情を知らないので普通の息子だと思っている親に「これ格好良いよ!」と服とか色々と勧められたりしましたが、あまり気乗りしなかったですね。後になってから気がついた事ですが私は「可愛い」と言われる事が嬉しいという事を自覚したので、そんな事に気がついてない当時の自分としては格好良さを求められる度にモヤモヤした感情を抱いてました。

成長する度に「あぁ私はこういう役割を求められるんだな」と思うようになり、次第に無意識に男の役割とこなすようになっていましたが、ただその合間にも「なんでやりたくもない事を求められるんだろう」と悩んだりしてました。

ただ正直な話、悩んだり精神的に落ち込む事もあって割とボーッとして生きていた10代なのでその時は悩んだりモヤモヤを抱えたまま過ごしてました。


時は過ぎて20代の話。

ダイエットを始めた事も以前書きましたが、この時やっていた筋トレ。男だしテストステロンは当然バリバリ出ているので運動すれば適度な事でも筋肉が付いてくるんですよね。当然男の体に尚更磨きがかかるのですが、筋肉フェチなのもあって人のを見ていたら「自分も筋肉つければ自分が好きになれるかな?」と思い筋トレをある程度やってました。結論から言うと「筋肉が付くのは力出るから便利ではあるけど、筋肉質な体を自分が目指すのはなんか違う気がする」と思い辞めてしまいましたね(あと虚弱体質改善目的もありましたが、運動する度に一時的に具合悪くなるのもあって辞めました)。

ただ筋トレをしている間は運動の事だけを考えていればよくて、余計な事は考えなくてよかったという部分に関しては助かってましたね

男が体を鍛えるというのは世間的には前向きに受け取ってくれるので、親含めて周りの人がポジティブな事を言ってくれるのは悪い気はしないものの「でもあんまり嬉しくないのはなんでだろう」と考えてました。

20代半ばになると無意識にこなしていた男の役割が徐々に嫌になってきて、他にも色々とあって心がしんどくなってきて、30歳になったある日、自分の中の張り詰めていた糸のようなものがプツンと切れたような感覚を覚え「あ、もう無理」「もう30年も真面目に男をやったからいいんじゃないのか」と思いそこからMtFにおける女性ホルモンに関する知識や情報を集めて、その年のうちに女性ホルモンの服用を始めました。

結果論ですが、今までの経験は無駄ではないと思うけど、一方で無駄な抵抗をしてたなと我ながら思います。

確かに男の役割をやっていれば気紛れる部分もあったけど、それは根本的な解決にはならないわけで。寧ろ自分の心が徐々にしんどくなってくるからやるべき事ではなかったね。

今の時代なりのしんどさもあるとはいえ、今以上に男らしさ女らしさを求められる昔だったら本当に地獄だったんだろうなと考えてしまいます。

悩みが少なくなる世の中になってほしいね。